クレジットカード事業のビジネスモデル
クレジットカード事業の稼ぎ方は大きくわけて3つあります。
1つ目は、店舗から徴収するショッピング手数料(加盟店手数料)です。あなたが1万円の買い物をすると、その1万円のX%を店舗から徴収します。
実際には、Y%をカードブランド(Visa,Master,Amex,JCBなど)に支払うことになりますので、取扱高のX-Y%が粗利になります。XとYは各会社や契約によって異なりますが、店舗に課金するパーセントXは、日本では3%?くらいの場合が多いと思います。
カードブランドへの支払いパーセントY%は取引ボリュームによって変わるのが一般的です。例えば、あなたが今日1万円の買い物をカードで支払うとするとします。店舗には、早い場合は数日以内に1万円からX%を除いた金額が振り込まれます。
他方、僕のカード会社への支払いは、事前に定められた支払い期日になります。つまり、カード会社が購入者(あなた)から資金を回収し、店舗に「先払い」している、そのためにX%を徴収する、というビジネスです。
2つ目は、カード利用者への「分割払い」や「リボ払い」の手数料です。例えば、あなたが本日5万円の買い物をしたとして、この5万円は、今月末が支払い日だとします。
あなたが「分割払い」や「リボ払い」を選択して、リボ払いを毎月5千円に設定していたとすると、今月末の時点であなたは4万5千円分、カード会社に「借金」をしていることになります。
この「借金」に対して、非常に高い金利(実質年利約18%)を取る、というのがこの「リボ払い」ビジネスです。この「借金」はクレジットカード会社はリボ残高と呼んでいます。この「リボ払い」分は、短期とはいえ、金利が実質年利約18%と非常に高いので、凄まじく儲かります。合法的に18%の年利でお金を貸せるビジネスなのです。
3つ目は、年会費が挙げられます。
一般的なカード会社は年会費無料の一般カードに加え、年会費がかかるゴールドカードを発行し、ロイヤルカスタマーを囲い込む戦略をとっています。ゴールドカードの年会費といっても各カード会社によってさまざまな付帯サービス+価格を設定し差別化を図っている状況です。
以上のように、クレジットカードビジネスは、カード利用者にお金を「貸す」ことで稼ぐビジネスです。少し余談になりますが、お金を「貸す」ビジネスである以上、貸したお金を回収できない(あるいは回収にコストがかかる)というリスクが存在します。
つまり、お金を返せない人に貸したたら大変なことになる、ということですね。これまで上げてきた手数料をお店または、店舗から少しづつとっていくビジネスモデルなのですが、クレジットカード会社の内部から見たらどのように組織が構成されているのでしょうか。
(ここでは基本的なスキームを話しています。)
1.カード利用者を獲得する(年会費を稼ぐ)
2.カード利用者が、たくさんの支払いをカードでしてくれるように取り組む(取扱高を増やす=加盟店手数料を稼ぐ)
3.カード利用者が、出来るだけリボ払いを増やすように取り組む(リボ取扱高を増やす=リボ残高を増やす=リボ手数料を稼ぐ)
会員数を増やす→取扱高を増やす→リボ取扱高を増やす→リボ残高を積むクレジットカード会社は川上(会員獲得)から川下(リボ残高を積む)をお客様の動向を分解して戦略を立てています。
クレジットカード会社の収益の源泉
皆さまはクレジットカードのリボ払いはご存知ですか?おそらくなんとなくヤバい金融商品だってことはご存知なはず。
世間一般の人々に嫌われ続けている「リボ払い」を何故カード会社は押し続けるのでしょうか?クレジットカード会社目線でリボ払いについて説明していきます。
何故カード会社がリボを押すのか、一番初めに結論から書いちゃおうと思います。そうです。めちゃくちゃ儲かるからです。
上場しているカード会社の決算書を見てみてみましょう。
今回は楽天株式会社の決算資料なのですが、上場しているカード会社の決算資料には必ずリボ残高の指標が記載しています。何故、こんなにもカード会社はリボにこだわるのか。
簡単なことで、高い金利で顧客に貸し付けているからめちゃくちゃ儲かるのです。決算書に記載しているリボ残高(お客様のリボ払いが積みあがったもの)に対して金利がかかり、そのままカード会社の収益になります。
具体的に数字で確認をしてみましょう。
リボ残高:3736億円リボの年利:18%(ざっくり12カ月で割ると多くて月利1.5%)ゆえに、3736億円×月利1.5%=56億円毎月、何もしなくてもリボ残高から56億円もの収益が入ってきます。
このリボの収益に加えて、カード会社の収益は加盟店からの手数料やゴールドカードの年会費からの収益がありますが、リボの収益が一番会社の数字に直結します。
しかし、いきなりリボ払いにするような顧客はなかなかいないのでカード会社は知恵を絞って、普通のカードの取扱からリボの取扱に転換させようと必死なわけです。
最近のクレジットカード会社は入会するだけで大きなポイントをお客様に還元しているのですが、リボ払いの手数料の収益がなければ投資回収はおそらくできないでしょう。
余談ですがクレジットカード会社は二つのビジネスモデルを保有しているといわれます。それはフロービジネスとストックビジネスです。
フロービジネスとは、カードの取扱高から生まれる一時的な加盟店手数料を指し、ストックビジネスとは年会費やリボ残高から生まれる定常的な収益を指しています。
この二つのビジネスモデルを構築しているので安定的に収益が得られるのです。
上場しているカード会社の決算書を見学
就職活動をするとき、説明会などでは就職者はお客様としてしかみなされておりません。
では会社の本当の姿をみることはできないのでしょうか。そんなことはありません。上場企業で言えば、会社の保有者に向けて真の情報を発しなければいけないからです。
会社の保有者とは株主であり、会社は株主向けに完全に正しい情報を掲載しています。
もし、貴方の応募しようとしている企業が上場企業なら、(あるいは上場企業の子会社なら)、必ずIR(Investor Relations)という株主や潜在的な株主である投資家向けに、自社の経営状態を説明し、アピールするページを持っているはずです。
IRには、採用ページで外面ばかり良いところをアピールするのとは全く違う、楽屋裏の事情も含めた会社のナマの姿が露出されています。
ここで嘘を付くと東芝のような粉飾決算になる。基本的に嘘はつけないので、かなりの程度までは「不都合な真実」も曝け出されている。
具体的には、上場企業ならば「有価証券報告書」というものを必ず出しています。長ったらしい書類なのだが、もし真剣に入りたい会社があるのなら、ザッとでもいいので通読してみるべきでしょう。
そのうえで、最も読むべきパートは、「事業の状況」の章に入っているであろう「事業等のリスク」「対処すべき課題」です。
ここは、その会社が今、もっとも気にしていること。つまり弱点が書かれている。ここに書いてある「リスク」や「課題」を解決するために、自分だからこそ出来ることが何か?自分の「強み」とやらがどう活かせるのか?それを考えぬいて、アピールすべきなのです。
どんなに順調に見える会社だろうが、リスクや課題が全く存在しない、ということは絶対にありえません。
あるいは、応募先の企業名で検索し、雑誌や新聞等、あるいは証券アナリストのレポート等で、ネガティブに批判されている記事を見つけたら、応募者は「なんだ、この会社、いけてないのか」と、がっかりするのでなく、むしろ、チャンスだと思うべきです。
なぜなら、その批判記事でネガティブに指摘されている課題を解決するために、自分なら何が出来るか?を考えてみればよいからです。
実際にクレディセゾンが開示している決算短信をみてみましょう。「事業等のリスク」=会社の弱点をみると、クレディセゾン自身が自らこんなにも課題をを上げてくれています。
事業等のリスク
当社グループの業績、財政状態及び投資者の判断に重要な影響を及ぼす可性のある事項については、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当決算短信提出日(平成29年5月12日)現在において当社グループが判断したものであります。
1.経済状況
当社グループの主要事業であるクレジットサービス事業、リース事業、ファイナンス事業、不動産関連事業及びエンタテインメント事業の業績及び財政状態は、国内の経済状況の影響を受けます。
すなわち、景気後退に伴う雇用環境、家計可処分所得、個人消費等の悪化が、当社グループが提供しているクレジットカードやローン、信用保証及び不動産担保融資等の取扱状況や返済状況、ひいては営業収益や貸倒関連費用等に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、中小規模の企業を主要顧客とするリース事業についても、景気後退に伴う設備投資低迷や企業業績悪化によって、営業収益や貸倒関連費用をはじめとした業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
2.調達金利の変動
社債の発行や金融機関からの借入等に加え、金利スワップ等の活用により資金の安定化、固定化を図るなど、金利上昇への対応を進めておりますが、想定以上の金融情勢の変動や当社グループの格付けの引き下げによって調達金利が上昇し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
すなわち、貸付金利等の変更は、顧客との規約の変更、同業他社の適用金利等、総合的判断が必要とされるため、調達金利の上昇分を適用金利に転嫁できない事態が生じた結果、利鞘の縮小を招く可能性があります。(-7-(株)クレディセゾン(8253)平成29年3月期決算短信)
3.競争環境
日本の金融制度は規制が緩和されてきており、これに伴ってリテール金融業界再編の動きが活発化しております。クレジットカード業界においても再編や異業種からの新規参入が増加するなど、ますます競争が激化しております。
このような市場変化に伴い、加盟店手数料率の低下をはじめとした、取引先との取引条件の変更等が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
4.主要提携先の業績悪化
クレジットサービス事業において、提携カード発行契約あるいは加盟店契約等を通じて多数の企業や団体と提携しておりますが、こうした提携先の業績悪化が、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
例えば、当社の有力なカード会員獲得チャネルである、提携小売企業の集客力や売上の落ち込みが会員獲得の不調や取扱高の低迷につながり、ひいては営業収益にマイナスの影響を与える可能性があります。
また、当社グループはこうした提携先の一部と出資関係を結んでいるため、提携先の業績悪化が、保有する有価証券の評価損をもたらす可能性があります。
5.システム・オペレーションにおけるトラブル
クレジットサービス事業をはじめとして、当社グループの主要な事業は、コンピュータシステムや通信ネットワークを使用し、大量かつ多岐にわたるオペレーションを実施しております。
従って、当社グループ若しくは外部接続先のハードウェアやソフトウエアの欠陥等によるシステムエラー、アクセス数の増加等の一時的な過負荷による当社グループ若しくは外部接続先のシステムの作動不能、自然災害や事故等による通信ネットワークの切断、不正若しくは不適切なオペレーションの実施といった事態が生じた場合、当社グループの営業に重大な支障を来し、ひいては当社グループに対する信頼性の著しい低下等により、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
6.個人情報の漏洩等
当社グループは、カード会員情報等の個人情報を大量に有しており、適正管理に向けた全社的な取り組みを実施しておりますが、万が一、個人情報の漏洩や不正利用などの事態が生じた場合、個人情報保護法に基づく業務規程違反として勧告、命令、罰則処分を受ける可能性があります。
これにより、当社グループに対する信頼性が著しく低下することで、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
7.規制の変更
当社グループは、現時点の規制に従って、また、規制上のリスクを伴って業務を遂行しております。
当社グループの事業は、「割賦販売法」、「貸金業法」、その他の法令の適用を受けておりますが、これらの法令の将来における改定若しくは解釈の変更や厳格化、又は新たな法的規制によって発生する事態により、当社グループの業務遂行や業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
また、「利息制限法」に定められた利息の上限金利を超過する部分に対して、不当利得として返還を請求される場合があります。
当社グループは将来における当該返還請求に備え、利息返還損失引当金を計上しておりますが、今後の法的規制の動向等によって当該返還請求が予想外に拡大した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
但し、どのような影響が発生しうるかについて、その種類・内容・程度等を予測することは非常に困難であり、当社グループがコントロールしうるものではありません。
8.たな卸資産及び固定資産の減損又は評価損
当社グループが保有する土地・建物の時価が著しく下落した場合、又は固定資産を使用している事業の営業損益に悪化が見られ、短期的にその状況の回復が見込まれない場合、当該固定資産の減損が発生し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、投資有価証券・関係会社株式・出資金について、時価が著しく下落又は投資先の業績が著しく悪化した場合には評価損が発生する可能性があります。
9.自然災害等
地震等の大規模な自然災害により、当社グループの保有する店舗や施設等への物理的な損害、従業員への人的被害があった場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
こんなに具体的に自社がさらされているリスクを記述しています。この会社のリスクをあなたならどう捉えるでしょうか。あなたのスキルで解決できる問題はあったでしょうか。あるのならば是非そのスキルをアピールしてみてください。そんなスキルは自分にはないと感じたあなたはこの決算短信に記載しているリスクを別の角度・視点から捕えてみてください。そして自分だったらこうしたいという主張を考えてみてください。本当の会社の分析ができると思います。
この決算短信を読んで会社分析を行う行為はカード会社に限らず、日本にある上場している会社ならばすべて実践できる行為ですので、他社の決算短信もぜひ眺めてみてください。
フェルミ推定を学ぶ
皆さんはフェルミ推定という言葉を聞いたことはありますか?フェルミ推定は採用の面接などで良く問われることがあります。
フェルミ推定(フェルミすいてい、英:Fermiestimate)とは、実際に調査するのが難しいようなとらえどころのない量を、いくつかの手掛かりを元に論理的に推論し、短時間で概算することを指す。オーダーエスティメーションや「封筒裏の計算(英語)」ともいわれています。
何故、面接で問われると思いますか?それはフェルミ推定は暗記では対応できないと考えられており、答えのない問に対して仮説を立て論理的に考えることが求められる為、求職者のふるい落としを効率的に行えるからなのです。
効率的にとはそれだけ明暗がわかれる問いであり、普段から頭を使っている人と使っていない人の差がとても明確になります。そんなフェルミ推定ですが、今回はクレジットカード会社についての例題を皆さんと一緒に考えてきたいと思っています。
今回の問いはこちらです。
【問題】
AMEXはカード会社間の熾烈な競争にさらされています。強豪のカードは年会費無料やマイレージサービスなどとの提携で攻勢をかけてきています。AMEXは思い切って年会費を大幅に安くして、年会費1円にすることを考えています。これは良いアイデアでしょうか??
下記の情報を参考にしてみてください。
i.AMEXの年会費は1万2,600円
ii.クレジットカードブランドの世界シェア
VISA=発行枚数24億枚、取扱高784兆円
MasterCard=発行枚数23億枚、取扱高483兆円
AMERICANEXPRESS=発行枚数1.1億枚、取扱高110兆円
JCB=発行枚数1億枚、25兆円
(出所:業界地図2017年度)
しばらく自分の頭で考えてみてください。面接官に聞かれた場合、グループディスカッションで問題として出された場合、あなたはどのように考え答えますか?
さて、みなさんをどこからアプローチをしていきますか。この問題はビジネスケースの問題で過去に多くの戦略コンサルティング会社で出題されました。
決して難問ではありませんが、問われていることをよく考えないと的外れな回答になってしまいます。さっそく、前提確認をしっかりしましょう。
1.前提確認
問いの前提確認の以前のお話ですが、面接などで聞かれた場合によく間違えて答えてしまうのが「AMEXは高所得者層向けのブランドに特化すべき。マーケティングのキャンペーンを考えます。」といった回答になります。
上記のような答えは完全に論点のすり替えですので、面接官のいっていることに対して的確に回答をしていかなければいけません。面接で聞かれた場合には面接官の求めている答えはそういうことではありません。
・もし年会費を下げて会員がたくさん集まるのならやるべき
・年会費を下げた分の減益を回収できないのでやるべきではない
などの、やったほうが良いのか・悪いのかの2択で結論をだすことが大切です。
今回のやる・やらないの結論を出すために必要な要素として、クレジットカード会社の収益(ビジネスモデル)を挙げることができます。
2.アプローチ設定
クレジットカード会社の収益源は大きく分けてシンプルに考えていきます。
1つは年会費、もう1つは買い物の際の手数料になります。(今回はリボの利用額は考慮に入れていませんが、入れた場合により具体性が出て質の良い回答になると思います。)式にするとこのような式になります。
カード会社の収益=[年会費+(会員1人あたりの年間利用額×加盟店手数料率)]x会員数
3.モデル化
今回は参考としてあらかた数値を出しているので、年会費、利用額、会員数はの数値は揃っています。残りの加盟店手数料率をどう出すのかですが、感覚的にお店・お客さん・カード会社とプレイヤーがいて、消費税の5%が取られている現状ですので一旦消費税の半分以下の2.0%として考えていきましょう。(あんまり立ち止まらないほうがいいです。)
4.計算実行
AMEXの売上を見積もって行きます。
カード会社の収益=[年会費+(会員1人あたりの年間利用額×加盟店手数料率)]×会員数
式であるように大きく分けて年会費収入と手数料収入を導き出していきます。
○年会費収入
データから発行枚数が1億1000万枚です。つまり、会員が1億1000万人いるとして、これに年会費を掛け算します。1億1000万枚×1万2600円=1兆3860億円これが年会費収入になります。
○カード手数料収入
次に手数料収入についてですが、頭出ししたデータでは年間110兆円となっており、さきほど加盟店手数料率を2.0%としました。よって、導き出される答えは下記になります。
110兆円×2.0%=2兆2000億円
AMEXの収益は年会費と手数料収入で合計3兆5860億円という答えが出せました。
5.検証
最後に検証を行っていきます。今回行う検証としては、年会費を1円にして儲かるのか?儲からないのか?を検証していきます。
年会費と手数料収入で合計3兆5860億円という答えが出せましたが、割合でみると年会費の収入が39%と手数料の収入が61%となりました。ですので、年会費を1円にすることで39%の収入が無くなることを意味しています。
そこで出てくる疑問が会員を増やして39%減った収入をカバーできるのかということです。
ここでまず年会費が下がったことで会員が増えると仮定します。この増えた会員がカードを利用することで、どのくらいの収益が見込めるでしょうか?現在、会員1億1000万人の会員で手数料収入を2兆2000億円上げています。
年会費の収入のカバー分だけでも、単純計算で手数料だけで3兆6000億円ほどの売上が必要になります。1億1000万人:2.2兆円=??万人:3.6兆円これを計算すると答えが1億8000万人。7000万人増です。つまり39%の会員数の増加を見込まなければいけません。これは現実的でしょうか?
現実性を判断するには2つの観点があります。
まず会員の獲得の観点ですが、そもそも年会費を1円にして会員が増加するという前提でしたが、本当に会員は増えるのでしょうか。競合他社のクレジットカードの年会費は0円のところが多いです。AMEXも横並びにしたところで急激に会員が増えるとは思えません。
もう一つは新しい会員が買い物に使う金額の問題です。
参考データの取扱高を発行枚数で割ると1会員当たりの利用金額が算出できます。
計算をしてみるとAMEXの利用額年間100万円というのはダントツに高いといえます。高所得者層をターゲットにしているからこそこの数字を出せているのです。年会費1円の魅力に惹かれてAMEXのカードを作る層というのは大衆層であると想定できます。
仮に大衆層がカードを作成し、VISAの33万円ほどの利用をした場合には話の前提が大きく崩れてしまいます。年間100万円利用の想定で7000万人(39%増)の会員増が必要だったはずですが、これが年間33万円の会員しか獲得できないとすると、2億1000万人もの増加を必要になります。この数字は会員数を3倍以上にしてくださいといっているということですので、短期間での達成は到底不可能です。
ここから導き出される回答としては、AMEXの年会費は1円にするべきではないということになります。どうでしたか?フェルミ推定もビジネスに応用していけばどんどん面白くなっていきます。
経験者は語る
実際にクレジットカード会社にいて感じたことは、ネット系かつ、プラットフォームを確保している企業が発行しているクレジットカードは他のクレジットカード会社を圧倒しています。
クレジットカード会社というと、ほとんどが銀行の子会社であり、堅苦しいイメージを持っている人が多いと思いますが、今時クレジットカードに募集をかけるために支店を持っているところはかなり厳しいと言わざるをえません。
ネット系のクレジットカードと比較してみた際にはコストが圧倒的に違います。
クレジットカードの獲得市場としては、支店→流通(イオンモールなど)→ネットと時代が動いています。この流れを受けて、伝統的なクレジットカード会社もネットに力を入れてきています。
今一番クレジットカード会社で活躍できる人材というのは、WEB系のスキルを保有していることかもしれません。
ビジネスモデル的にはリボの取扱高は会社として一番数字に影響を与えますので、リボ取扱高を増やすための数字を分析できるスキルを保有している人もクレジットカード会社としては渇望をしています。
クレジットカード会社の人間はほとんどが文系出身者で数字分析は到底高いものとは言えません。回帰分析すら理解できない人がほとんどでしょう。もしあなたが理系出身者ならそれだけで人目を置く存在になることができます。
正直に言うとクレジットカード業界は完全にレッドオーシャンです。商品性の差別化はほとんどできず、現状は各カード会社の親企業(または自社発行)が保有しているポイントプログラムに依存して商売を行っています。
この寡占したクレジットカード業界で勝ち残っていける会社はどこでしょうか。昨今フィンテックといわれる、金融+テクノロジーがバズワードとしてメディアに取り上げられています。Apple、Google、Amazonなどのグローバル企業も日本の決済の領域に足を踏み入れています。
この寡占したクレジットカード業界でどの会社が生き残るのか私は分かりませんが、皆様個人が生き残れるかどうかはまったく別な話です。
少しでも皆様が知識とスキルを身に着けて、皆様が活躍できることを心から願っております。
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