9/15 銀行融資の基本

銀行融資

基本のキ

銀行からお金を借り続けたいと思ったら読む

「ウチの会社はこの先もずっと問題ないハズ!」それは大間違い!!

「銀行員の手の内」を知り尽くした元銀行マンが銀行からお金を借り続けるための最短距離となる具体的方法を徹底的に語りつくす!!!

 

【はじめに】

 

しかし、融資の専門知識を経営者が身につけることはなかなか難しく、最初の一歩を踏み出すための基本知識がなければ、その必要性を感じ取ることすらなかなか難しいというのが現状です。

こうした経営者を支えるためにいるのが、金融のプロである銀行の担当者たちです。しかし、銀行員は企業が融資を受けるためにやってはいけない行動をあらかじめはっきりとは言わない傾向があります。経営が上手くいっているときはそれでも問題ないのですが、ひとたび状況が悪化してしまうと融資の審査に時間がかかってしまい、たちまち借入が難しくなってしまう。こういった状況を招きやすい「望ましくない貸借対照表の状態」が放置されていることは、残念ながら珍しくありません。

つまり、状況が悪化してから慌てて資金繰りのためにお金を借りようと思っても、後の祭りとなることが非常に多いのです。知らず知らずのうちに決算書に残ってしまった数字に対して銀行から大きなマイナス評価を食らったためになかなか融資を受けられず、本来する必要のないはずの苦労をする羽目に陥る経営者は後をたちません。

銀行員時代に数多く見たこうした状況において、私は融資を受けるためのコツを経営者にお伝えすることで、自分の銀行員としての専門知識を役立ててきました。しかし、こうしたことができるのは自分が担当した僅かな数の取引先のみ。もっと多くの経営者に知っていただくことができていればと、強く思わずにはいられなかったのです。

そこでここでは、金融のプロの知識に基づいて小学生レベルの簡単な計算式とごく分かりやすい身近な例を取り上げながら、「誰でもわかる融資のイロハのイ」を徹底的に解説させていただきました。わかりやすさと専門性の両方を備えたものですから、「融資を受けたい!」という経営者はもちろん、本音を言えば、今現在スムーズに借入ができている経営者にこそ手にとってもらうことで、今後も今と同じように「借り続ける」ための知識を活用していただくことのできることになると確信しています。

お金をいくらでも借りられるような、魔法の言葉などありません。しかし、経営者が銀行からお金を借りたいと考えているときに、あらかじめ融資を受けるための役立つ簡単なポイントを知っておくことには大きなメリットがあります。これはつまり、自分の会社が銀行にどのように判定されるかを理解しておくということ。知識を得ることで、会社はお金をどれくらい借りるのが適当であるか、どれくらい借り続けられるのかを自力で判断できる力を蓄えるということなのです。

経営者自身が会社の今の状況をしっかりと把握し、数字と言葉で語ることができる状態であれば、銀行員とのコミュニケーションや情報交換を円滑に行えるようになります。いつ何時あなたの事業継続の障害となるかもしれない、手強いお金のリスク。これをご自身の知識と判断で大きく低下させることができるようになるために、この場を大いに役立てていただければ幸いです。

 

第1章

必要なお金を見極めろ融資額の目安を把握しよう

 

■小学校の算数」で即わかる!会社が本当に必要とする金額

融資を受けたいと一口に言っても、会社がどれくらいの融資を受けるのが適当であるか、その金額をあなたは今、把握できているでしょうか。融資金額はただ多ければいいという訳ではありませんが、必要な額に満たないようでは会社のピンチを凌ぐこともできません。どの程度のお金を借りるのが妥当であるのか、そしてきちんと返済していけるのかを見極めるためには、やはり非常に難解な専門知識が必要なはず?

 

ご安心ください。そうではないのです。

ひとまずは年商と月商がわかっていれば、今のあなたの会社の状態そしてどれくらいの融資が受けられるかの目安を簡単に知ることができます。会社の利益はどうなっているのか、銀行にはどのくらい借りることができるのかを、まずはごく簡単な計算から把握してみましょう。この作業によって、あなたの会社がこれから銀行に融資を受けるための、考え方の基準を作っていきたいと思います。

会社の貸借対照表をご用意ください。ここからいくつかの数字を拾い、せいぜい2ケタから3ケタ程度の、ごく簡単な算数の計算をするだけでOK。税理士や銀行員にわざわざ相談しなくても、簡単に自力で把握することができます。数字が苦手であっても難しくはありません。ややこしい数字のプロであった、元銀行員の私が言うのだから間違いない(笑)。まずはあまり細かい部分に囚われずに、あなたの会社の輪郭をとらえることを意識してみてください。

■<運転資金編>決算書でわかる!借入できる金額の計算方法

実際に計算する前に、モデルケースとして「年商360百万円で月商30百万円を売り上げる企業」を例として考えていきましょう。ここでは計算をより単純なものにするために、百万円以下の単位をこのようにまとめた形で表記していきます。

この会社の賃借対照表から、必要な運転資金の額をわかりやすく表したのが上の図です。これから会社が払わなくてはいけないお金である「買掛金」は50百万円です。これに対して、まだ売れていない在庫(棚卸資産)が30百万円あって、すでに商品が売れて今後代金が入ってくる売掛金は70百万円あります。つまり物が売れているのですが、代金は回収できていません。今この会社は「先にお金を払って後からお金が入ってくる」という状態です。図のように、「左が長くて、右が短い」という状況がそれを表します。

結論としては、貸借対照表の左側に表される「後から入ってくるお金」が右側に表される「後から払うお金」より多い企業は、仕入で先にお金を払って、その後売上代金が入ってくるまでに必要な資金を事前に貯めているか、足りないなら借りなければならない、というざっくりした理解をしていただければよいかと思います。例えば、飲食業は一般的に食材を仕入れてその日のうちに売上代金が入るため、「運転資金はいらない」と銀行は判断します。コロナ禍のような特殊な状況でない限り、このように判断します。

現実には、企業は複数の取引先とお金のやりとりを行います。いくつもの取引の全体の結果として、先にお金を払っているのか先にもらっているのか、という会社の「状態」が貸借対照表に表れてくるのだということを覚えておいてください。こうした「状態」が、いきなり大きく変動することはあまりありません。

さて、それではこの企業の借りられるお金の目安を計算してみましょう。

借入可能な金額を算出する計算は、下のように行います。

必要運転資金50百万円+月商1~2ヶ月分=約100百万円

この会社であれば約100百万円、つまり100百万円前後まで貸すのであれば筋が通るのではないか、と銀行員は考えるのです。正直、100百万円は多いですが、現在売上が増加していて今後も売上が増えていく、というような状況である場合は多いと判断しない場合もあります。ただし、不良化した資産(資産として見れないもの)は無いことが前提となります。

こうした不良化した資産の判定については、2章で詳しくご説明いたします。

次に、同じように年商360百万円で月商30百万円の別の企業を例にしてみましょう。ただし、今回は「長期借入金の年間返済額40百万円」という条件を追加します。理由は後ほど説明します。

この会社の貸借対照表では、先ほどの会社とは反対に図の右側が長く、左側が短い状態となっていますね。今後払わなくてはいけないお金、つまり右側の買掛金の10月の2ヶ月分ちょっと)に対して、左側の売掛金と棚卸資産は4しかありません。これは、売掛金が買掛金を支払うより早く回収できている状態を表します。先ほどとはちょうど逆で、払うお金は売上代金が入った後から払うという状態です。基本的には売上代金の回収が仕入代金を支払うより早いのだから、本来なら必要運転資金を借りる必要がないのではないか、と銀行にみなされる状況と言えます。

この場合の銀行が判断する妥当な運転資金名目での借入の目安は、先程の100百万円よりもぐっと小さくなります。

長期借入金の年間返済額程度まで=40百万円

1年間で借り入れが減る分くらいの、つまり1年間で返済する分くらいまでであれば「まぁいいだろう」と銀行は考えます。ここまでであれば、お金を貸す理由付けができると判断するのです。この場合、不良化した資産があろうが無かろうが図の右側の方が長いので、運転資金は不要との判断に変わりはありません。

必要運転資金の額は取引先の支払い条件などによって大きく変わってくるものでもあるので、もちろんこの計算だけで一概に決めつけることはできません。ひとまずここではざっくりとした計算で現状を掴んだ上で、先まで読んでいっていただく足がかりとしてもらえればよいのです。

まずは年商と月商といった馴染みのあるデータから、あなたの会社が銀行から運転資金を借り入れるのに適当な金額を算出してみました。計算した結果、これでは運転資金として足りないと考える方もいらっしゃるかもしれません。これについては先の4章でも触れることになるのですが、一度ここで「運転資金」とは何なのかを整理しておきましょう。

運転資金とは「払うお金ともらうお金との間に生まれている期間の「ギャップ」を表します。このギャップを埋めるために借りる借入金が「運「転資金借入」です。運転資金借入の考え方にありがちな落とし穴には、大きな注意が必要になります。すなわち、運転資金として借り入れをしたお金を別のことに使うのは、経営者が思っている以上にご法度な行為だということです。

ちょっとした機械設備を購入したいと思うものの、見積書を銀行に提出したり、色々とインタビューを受けたりするのは面倒だと考えてはいませんか。「面倒だという理由では、銀行は納得してくれないだろう」と思い、「運転資金」という漠然とした形で融資してもらえれば楽だと短絡的な考えを持ってしまう経営者は、実は多くおられるのです。

いかにも「あるある」な状況ではあります。しかし場合によっては、「運転資金がいらないであろうタイミングのはずなのに、なぜ融資を申し込むのだろう?」という当然の疑問を、銀行は抱かざるを得ないのです。

仮に銀行の担当者に「色々と手続きが面倒臭いので、運転資金ということにして融資を出してよ」と伝えたとしましょう。この場合でも担当者がある程度理由づけできると判断したならば、機械設備を買うことを伏せて融資の話を進める可能性はあります。しかし、たとえこのときは借入に成功したとしても、結果として次にお金を借りるときに理にかなった理由付けがしづらくなり、融資を受けるのがとても難しくなってしまうというリスクを高めてしまうのです。

ちょっとした面倒を避けても、会社にとってあまりよいことはありません。融資を受けるときには、急がば回れが正解です。結局正面突破でまともに借りることこそ一番メリットが大きいということを、是非覚えておいてください。

さらにいえば「社長、見積書とかインタビューとか面倒でしょう?運転資金として融資するので、そのお金で買っておいてください。」という銀行さえあります。それが落とし穴になるにもかかわらず、です。

 

■<設備資金編>決算書でわかる!借入できる金額の計算方

次に、設備資金として「機械を買うお金」の融資を受けたい、という場合を考えてみましょう。この例では、年商360百万円の企業が生産効率を上げて利益を伸ばすため、耐用年数、つまり減価償却が終わり帳簿上でこの機械の価値がゼロになるまでの年数が7年となる新しい設備を、50百万円で購入したいと考えています。

工場に新しい機械を導入するということは、会社がより儲けるために投資するということです。もともとある機械にさらに新しい機械が上乗せされる場合、「すでにある機械」を買うために借りた借入が利益で順調に返済されている上で、新しい機械を導入してさらに利益を出せるなら、その機械の分の融資が可能になると銀行は考えます。つまり、融資によって新しく出た利益で借りたお金を返す、という形を会社に作ってもらうのです。そんな理想の形を作れると思えることが、銀行が融資をする理由になります。

逆に言うと、もし新しい設備を買うために借りたお金を、適切な期間で利益を上げることで返せないようなら、融資を行う意味がないと銀行は考えます。お金を返せるだけの利益が出せないのにお金を貸したところで、融資をしたお金は返ってこない可能性があるからです。

このように、設備投資のための融資においても銀行の基本的な考え方を把握しておくことは、とても重要です。ここには例えば、「購入設備の耐用年数以上の期間では原則借りられない」という条件が存在します。過去に導入した設備が耐用年数を迎えて帳簿上から資産としては消えているはずなのに、利益が思ったほど出ていないために当時の借入がまだ残ってしまっているという状況は、銀行にとって「要注意」となる状況です。逆に、必要な利益をきちんと上げることができていれば、おおまかには耐用年数に近い期間で返済できる場合が多いはずだと考えてください。

また、総借入額が年商に近づけば近づくほど借りにくくなります。借入金が多額になれば、それだけ返せる可能性が低くなっていくのだから、当然のこととも言えますね。業種や資産の持ち方にもよりますが、借入額が年商の半分までいってしまうと銀行の警戒心はグッと高まります。

それでは、実際に設備投資のために必要なお金を借り入れるために、会社はいったいどれくらいの利益をあげていればよいのでしょうか。またしても、ごく簡単な計算によって借入に必要な利益水準をはじき出してみましょう。

(設備投資後固定資産純資産=利益から返済しないといけない部分)(※損益計算書にある経常利益の60%(法人税を考慮)+減価償却費)(※銀行によって判定に利用する計算式が大きく違う場合があります)

これは、言い換えると「利益から返さないといけない借入金を何年で返せるか」という計算式でもあるのです。2章で詳しくご説明する銀行によ決算書の判定にも使われている計算ですが、設備投資のための融資を受けるためには、この計算式の答えが20(単位は「年」)を超えないような利益が必要となります。

上の例のケースでは、新しい機械を導入したことによって「130÷20=6.5、つまり経常利益の60%に減価償却費を足して65百万円」の収益力が最低限必要となってきます。仮に減価償却費がゼロであれば、法人税を加味すると経常利益が12百万円くらい必要になるということです。

減価償却費はルールに基づいて費用に計上するものですが、減価償却が必要な資産の多くは時間の経過とともに費用として計上する額が減ります。減価償却が減った分もしくはそれ以上に利益を積み上げていけているなら、その分純資産の部分が増えていき、図の「利益から返済しなければならない借入」は小さくなっていきます。これが小さければ小さいほど、それだけ利益をしっかり積み上げられる会社という判定になるのです。

この計算結果が、投資した機械の耐用年数を大幅に超えてしまう場合はどうでしょうか。設備投資のために借りたお金を返せるだけの十分な利益が上がっていない、という状況が浮き彫りになります。利益が出せていれば増えていくはずの純資産も増えていきません。こうなると、設備投資の目的である「より多く利益を稼ぐこと」を会社が実現できていない状態とも言い換えられます。つまり、残念ながら投資としては失敗してしまった、ということです。

やっかいなのは、このように多額の借入金で設備投資をしてしまっている場合があることです。設備投資をしたのに利益が想定より増えないと、会社には借入金返済の負担が重くのしかかります。

ごく分かりやすい例でお話しましょう。例えばあなたに年間100万円の収入があり、50万円の支出があったとします。毎年手元に50万円が残りますね。これが3年間続いたとして、150万のお金を貯めることができました。そこであなたはこのお金で、副業での収入アップを目的に20万円のパソコンを買って、これまで100万円だった収入を120万円にしようとします。しかし、パソコンを購入した後も、収入は100万円で支出が50万円だったとしたら、結局収入は上がらず手元に残るお金は30万のまま。20万円のパソコン購入は無駄な投資となってしまいました。多額の借入金による投資の失敗とは、こうした状況が会社で、さらにはもっと大きなスケールで起きてしまっている、ということなのです。

投資の失敗により本来見込んでいた利益を実現できていない状況には、他にも色々なパターンが考えられます。例えば、機械を購入することで確実に効率は上がっているけれど、新たな生産体制に社員がついていけないために、結局期待していただけの利益が出せていないといった状況があげられます。そもそも導入した設備が過大で、機械の稼働が上がるだけの売上が無い、といった状況もありえるでしょう。いずれにしても、設備投資のための借り入れを返せるだけの利益があがっていない状態です。

投資した目論見通りに利益が上がっていない状態が続いてしまうと、上の計算式の答えが20(年)にどんどん近づいていってしまいます。銀行から借りた資金を返すのに、思っていたよりも時間がかかりすぎてしまっているということです。次章で再び詳しく触れますが、上の計算式の答えが20(年)を超えてしまうと、銀行による債務者区分という判定結果が「正「常先」から「要注意先」に転落してしまうのです。こうなると銀行は、リスクを取りづらい会社だと見なします。この先設備投資をさらに行おうと思って新たな融資を相談しても、銀行側は「その投資には無理があるのではないか」と判断してしまうのです。

ここまで、小学校で習う程度の簡単な計算を使いながら、「どれだけ借りられるのか」の額をざっくりと割り出してきました。是非あなたの会社の数字を当てはめて計算してみて、出てきた答えをもとに今後借りたいと考えている金額と比較してみてください。設備投資を考えている場合は、どれくらいの収益力が見込めたら実現可能な借入額なのかが、おおまかにおわかりいただけたと思います。

もちろん、この数字だけで即座に決めつけることはできないということもお分かりいただく必要があります。場合によっては借りたい金額よりもずっと少ない数字が出てしまい、戸惑ってしまったかもしれません。利益が上がっていない状況そのものをこの本だけでどうにかできるわけではありませんが、上の計算式で現状を把握することは、次の一手へ向けた最初の一歩を踏み出すための重要なヒントになってくれるはずです。

融資実現への足がかりとして、おおまかに借りられる金額の目安を把握したところで、次の章へと進みましょう。現状を把握して見直すべきところを洗い出しながら、あなたの会社がお金を借りやすい状態を一緒に目指していくための「最初の手引き」として、是非ともこの本を役立てていただきたいのです。

 

 

 

 

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