4,株の世界と馬券の世界
それからというもの、負け続きだった馬券の収支は一変します。
収支を記録していないので正確なところはわかりませんが、重賞競走においてだけ言えば、あれ以来回収率が100%を下回った年はないと思います。
考え方の大転換と、買い方の大転換が馬券収支を一変させたのです。
ところで、みなさんは株式投資をされたことはありますか?
株の世界では、プロのファンドマネージャーの運用成績の平均は、株式市場の平均に勝てないと言われています。
これは非常に興味深い話です。
超一流のファンドマネージャーでさえ年率105%を超える実績を出すのがやっと。むしろ素人のほうが運用成績が良かったりする。
競馬でも年間通して回収率100%を超える人は少なく、毎年安定して100%を越え続ける人はほんの一握りです。さらに競馬では控除率という厄介な敵が存在します。
中央競馬の控除率は単勝でも20%、WIN5では30%も取られるのですから、競馬で安定して勝つことは仕組み
として無理だと言い切る人が世の中の多数派を占めます。
しかし、実際には勝てる。勝ち続けている人がいるのです。
そういう人は何が違うのか?
長年競馬をやってきた私は確信を持って言えることがあります。
長期で見れば、競馬で回収率100%を超え続ける人は少ないが確実に存在する。
そして、その一握りの存在になれる可能性は誰もが持っているということ。
それはなぜか?胴元が30%近くのお金を奪い、残されたお金を参加者全員で奪い合うゼロサムゲームである競馬。
どこかの誰かの数少ない勝ちは、どこかしこにいる大勢の大負けで成り立っているのですから。では、なぜ100%を超えることができる人がいるのか?その人は理解しているのです。競馬が、どういうゲームかということを。
競馬は人間が走らない。馬が走るゲームです。馬の実力と着順がレース毎に必ず比例するわけではないという、つまりは馬という生き物を投資の対象としているゲームだということ。私たち人間にはわからない。
理解できない要素がレース毎に無数に関与し、そして結果に対しては人間が勝因や敗因を勝手に決めつけていくのです。Aという原因で負けたと関係者や我々が断定しても、
実はBというのが原因で負けたかもしれない。Cというのが要因で勝ったと特定しても、実はCという要素があったにもかかわらず勝ったのかもしれないのです。
よく、「前走5着に負けたのは、途中で落鉄していたんだよね。」という馬は次走では、落鉄しなくても5着になったりする。実際に、競馬では落鉄しても1着になる馬はたくさんいます。
落鉄という事象ひとつとっても、馬により、レースにより、影響がどれほどあるかは数値などでは表現できないのです。
ルメール騎手だから勝ったんだ!とファンは考えても、実は、ルメール騎手は、レース中位置取りを失敗してしまったにもかかわらず馬が強すぎて勝てたのかもしれないのです。
別の騎手なら圧勝していた可能性もあるわけです。
つまりは本当の原因がわからないまま、もっともらしい原因を推定し続けているのです。
本当の勝因や敗因がわかれば、競馬の予想の精度は歴史とともに上がっていくものだからです。永遠に勝利のための絶対法則が見いだせないのも、それが理由です。
株式市場ですら勝てる人がごくわずかであり、膨大な時間をチャートや財務分析の勉強に費やしても、それでも勝てない。逆に決算書が読めないような素人がプロに勝てたりすることが株の世界では起こるのです。
競馬も同じです。どれだけ勉強しても、どれだけ負け続けても、勝つためのヒントを蓄積させていき、自分自身の予想を進化させていくことだけでは、累計収支でプラスを出すことはできない。
つまり、どれだけ馬を知り競馬を知っていてもトータルで勝てるようにはならないということなのです。
それは競馬記者を見てもわかるでしょう。
彼らは決して競馬で生活はしていません。
人生で貯金できたはずの多くのお金を、その競馬に吸い取られていっているのが実情です。
そんな競馬関係者でも勝てないものが、我々素人に勝てるのか?
その答えは、もちろんイエスです。
素人だからこそ勝てる。そう言い切れます。私たちは素人であることを自覚し、その強みを生かし、競馬の深い知識を用いない全く別の角度から競馬と向き合えばよいのです。
株式ですら素人がファンドマネージャーを超えることができる。株と競馬。その似て非なる2つのモノ。
しかし、決定的に違う点があります。株は人気が集まれば集まるほど、その銘柄の価格は上昇していきます。逆に競馬は人気が集まれば集まるほど、その馬のオッズは下がっていくのです。
これが決定的な2つの世界のルールの違いなのです。この人気の考え方の違いを理解している人は、この競馬の世界での「逆張り」の威力がどれほど大きいかを知っているのです。
では、具体的にどうすれば競馬収支のプラスを安定的にだせるのか?
結論から言うと、長期で勝つには、上記の「逆張りの発想」しかありません。
つまり、この競馬への参加者がお金を投じるレースと言われる市場においては、勝つために、そのレースへの参加者を出し抜くか、他のレース参加者のミスを、自分のメリットとして活かすことができなければいけないということ。
競馬は知識が多いほど勝てるものでもないし、莫大な資金があれば勝てると言うものでもありません。
つまりは、他のレース参加者が陥りやすい誤りが何かを見極め、それを自分は避けるということに努めること。
このレース参加者の全体の心理で動くオッズという実態のないバケモノ。
検証のできないものを利用して、目には見えない、検証もできない「馬の勝つだろうハズの確率」からズレていく美味しいオッズに甘んじている馬を見つけること。
いわば大衆の意見の逆をつく「逆張り」ができることが勝つために一番大事なことなのです。大衆の総意が実力以上のオッズを作り上げるのです。
しかし、逆張りすれば勝てるというのもよく巷では聞かれること。
では、どういうことが具体的な逆張りになるのでしょうか?
それは、まず実像を見ることです。
実像とは逆の流れ、逆の方向へ向かうレース参加者の意思の塊。それが、オッズに現れます。
この逆張りは簡単ではありませんが、私たちに特別な才能や、深い知識などは不要です。誰でもできるようになるものなのです。
しかし、レース自体にのめりこんでは市場の思惑が、自分自身の固定観念と重なり、逆張りという行動自体ができなくなるのです。
逆張りしているつもりが、実はレース参加者の多くに裏をかかれている。市場の空気を読み違えている。そういうことが頻繁に起きます。
予想するのは全員人間であり、そういう自分自身も感情で判断し、好き嫌いで動く人間だからです。
いわゆる、「頭ではわかっていても、どうしても、その行動がとれない。」」そういうことが起こるのです。
潜在意識では的中しているのに、顕在意識で馬券を買うから負けるのです。
ここで市場の大きな感情の渦をテーマとして書き出してみます。以下は2021年のG1レース。今、執筆しているのは4月です。
今年のG1レースは、まだ4レースしか行われておりません。
その4つのGIレース。2021年のG1レースでのレース前の参加者の中に渦巻いていたレース前の感情のテーマを見てみましょう。
まず最初のG1。
2月に行われた
「フェブラリーステークス」→「カフェファラオは危険な人気馬」
そして次が
「高松宮記念」→ダノンはGIIでしか勝てない。川田もGIIでしか勝てない。
そのあとは
「大阪杯」→2強?いやいやサリオスを忘れてはいけません。3強でしょ。
そして4月の第二週
「桜花賞」→1番人気ソダシは白毛の人気先行馬2番人気サトノレイナスは大外不利。今年は粒ぞろいメンバーが揃った桜花賞。何が勝ってもおかしくない。
これがレース直前のレース参加者に漂う感情をテーマとして表したものです。この全体の雰囲気どおりに決着することも確かに少なくはありません。
しかし、その正反対の結果になったとき、それは、そうなる本来の確率以上においしいオッズを、私たちに運んできてくれるのです。
こういうレース毎に逆張りをしていくのは経験と時間がかかります。こんなことを言っておきながら、私自身もレースを購入している多くの人の心情を見誤ることも少なくありません。
この逆張りが、何も考えないで簡単にできないかな??
そういう方にオススメしたいのが、名付けて「オーナー馬券術」という方法なのです。
強いと信じた馬を買い続けることで、自動的に逆張りをしてしまう強制逆張りとでも言いましょうか
皆さん、こんな経験がありませんか?
「いやーずっと買い続けてきた馬なのに、今回は、さすがに来ないと見限ったら1着になっちゃった。いやーなんで、ここで買えなかったのかな~。」
みたいなこと。
これも、前走の着順や、相手関係に惑わされてしまい、信じていた馬の能力に自信が持てなくなったから起こる現象です。
おそらく、こういうとき、この馬のオッズは下がっているはず。今までずっと馬を信じている人ですら見限ったのですから、ファンでもない人は、なおさら買いません。こういう時こそ、「逆張り」が威力を発揮するのです。実力以上にオッズがおいしくなる。
でも考えてみてください。
強いと信じた馬がいつも勝つわけではありません。
いつか、どこかで、何かの条件が揃ったときに能力を出し切ってくれたときに勝利するのです。そのレースがいつか?なんて考えるのはやめましょう。
考えなくていいんです。
オーナー馬券術をやり続けさえすれば。
このオーナー馬券術。
これは株で言うと長期投資に似ています。
その都度、その都度、そのレースでの馬の状態、ライバル関係、レース適正、騎手など、ありとあらゆる情報から勝ち馬を予想し、馬券を組み立てる。
これは、株の世界でのデイトレードみたいなもの。
訓練と集中、そして莫大な予想時間が必要となります。最強の馬券術は、この個別レースの逆張りとオーナー馬券法を合体させたものですが、まずは、信じた銘柄を長い目で見て持ち続ける。
ウォーレン・バフェットのような長期投資を競馬でやってみるのです。
どうですか?ワクワクしてきましたか?
勝てそうな気がしてきましたでしょうか?
このオーナー馬券術。
ほれ込んだ馬を長い目で応援してあげられるうえに、さらには最終的にリターンまで運んでくれるのです。
こんなに楽しくて儲かる馬券法が世の中に本当にあるのでしょうか?(笑)
5,オーナー馬券術の運用方法
実は、もうずいぶん昔から、すでに存在しているPOG(ペーパーオーナーゲーム)まさにオーナー馬券術は、POG(ペーパーオーナーゲーム)そのものです。
POG(ペーパーオーナーゲーム)とは、仮想馬主として遊ぶゲームです。通常は2歳から日本ダービーまでの期間に馬主に指名した馬がレースの着順に応じ獲得したポイントの合計を仲間内で競い合うゲームです。
このPOG。このゲームに馬券のヒントがあるのです、このオーナー馬券術も自分の馬を決め、ずっと馬を追いかけ続ける点ではPOGと非常に似ています。
自分がオーナーと決めた馬を、重賞に出走するたびに単勝と複勝を決めた金額だけ買っていく。ただそれだけ。これがオーナー馬券術なんです。
しかし、POGとオーナー馬券術は、大きく異なる点があります。それは馬のオーナーになるタイミングです。
多くのペーパーオーナーゲームでは、馬を選ぶのはデビュー前の時期です。
つまり、まだ1度もレースで走ったことのない馬を選ばなければならないのです。
では、その馬を選ぶポイントとは、いったい何でしょうか?
血統、馬体、生産牧場、厩舎、関係者コメントくらいでしょうか?私たちは、馬主ではありません。
馬主のように何千万もお金を支払い、大きなリスクを抱えるのと同時に、購入した馬が、レースを勝って何千万という大きなリターンを得る権利は持っていないのです。
では、なぜ賞金という大きなリターンを得られない私たちが、デビュー前の能力が判定できない馬を選ぶという、ハイリスクだけを抱える必要があるのでしょうか?
そんな必要は全くないのです。私たちは、大きなリターンを小さなリスクで得られる絶好の立場にいるのです。
つまり能力を見定めることが困難なデビュー前に馬を選ぶ必要などないということ。この一般の馬券購入者という我々の気軽で自由な立場を最大限利用しない手はありません。
それが、私が提唱するオーナー馬券法なのです。
デビューしてから、じっくり、ゆっくり馬主になる馬を決めるのです。
強いと確信できる、そういうポイントを発見したとき、そのタイミングで馬主になれるのです。正確には馬主ではありませんが(笑)。
まずは自分の資金を託せると確信したタイミングで、追いかけ続ける馬を選ぶのです。
そして、その馬が今後、出走するたびに、ひたすら同じ金額で単勝、複勝を買っていくだけ。
どうでしょうか?
このシンプルな馬券法。なんだ?そんなものか?と思う人も多いかもしれません。
しかし、物ごとの本質は、いつだってシンプルなもの。競馬での勝利は、信じたものを信じ続けることの先にあるのです。
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