5/12 ①知って得するファクタリング

近年注目を浴びて、利用者も年々増え続けているファクタリング。

今回、新型コロナウイルスの影響も受け、資金繰りがかなり厳しい状況になった企業は少なくありません。

しかし、利用者は増えているものの、やはり中にはファクタリングというサービスそのものにあまり良いイメージを持っていないという方も多いようです。

もちろん、中には悪徳ファクタリング会社と呼ばれる企業も存在します。そこで今回、悪徳ファクタリング会社を見抜く力や詐欺などを防ぐ力を身に付けるために、ファクタリングの仕組みやメリット・デメリット、基礎知識などについて解説します。

 

1⃣.ファクタリングの基礎知識

ファクタリングとは?

ファクタリングは企業の資金調達手段の一つです。ビジネスにおける資金調達手段は数多くありますが、一般的には借り入れによる方法がとられることが多くなります。銀行や消費者金融などのノンバンクは、事業者向けに様々な商品を開発、販売しており、それぞれの商品ごとに利用できる属性や借入利率、その他条件などが設定されています。

これらは融資、あるいは借り入れなどと一般的に呼ばれることが多いですが、つまりは「借金」であり、その法的な性質は「金銭消費貸借契約」というものになります。一方、ファクタリングの法的な性質は借金とは全く異なるものです。ファクタリングは事業者間取引で生じた売掛債権を売却して現金化するものです。

日本国内の多くの事業者は掛け取引を行っていますが、掛け商売では商品やサービスを相手方に納入する際、その度に支払いの精算をせず、将来の支払い時期を定めてまとめて支払いを受けます。将来の支払期日までは支払いを受けられませんが、逆に言えば将来支払いを受けることができる権利「売掛債権」を保有することになります。

この売掛債権は財産的価値のある無形資産として、売買取引の対象になります。売掛債権をファクタリング業者に譲渡し、その買取金額をもって資金調達を可能にするのがファクタリングの手法です。

借り入れや融資では金利の負担が生じますが、ファクタリングは借金ではないため金利という概念がなく、その代わりに手数料の負担を伴います。ファクタリング業者はこの手数料利益を自社の儲けとしてサービス提供を行います。

ファクタリングはヤミ金ではない

資金調達と言えば融資がメインであることは確かですので、ファクタリングについて知らない人は「何やら怪しい手法」ではないかというイメージを持たれるかもしれません。しかし、ファクタリングはヤミ金のようなものではなく、もちろん違法なものでもありません。

現に銀行でもファクタリングを取り扱っていますし、金融庁でもファクタリングの正当性は否定していません。(※金融庁ではファクタリングを装った業者にも注意を呼びかけています。)

「ファクタリング」とは、一般に、企業が取引先に対し有する売掛債権をファクタリング会社が買取り、買い取った債権の管理・回収を自ら行う金融業務をいいます。このようなファクタリングの法定性質は、売買契約に基づく指名債権の譲渡であり、金銭の貸し借りではないので、貸金業の登録は必要ありません。

しかしながら、この「ファクタリング」とみせかけて、実際には、高金利で金銭を貸し付けている事例(具体的には、「ファクタリング」と称し、高額な手数料を差し引いて売掛債権の買取代金を支払う(貸し付ける)一方で、当該債権の管理・回収を自ら行わず、同債権の売り主をして売掛債権を回収させた後、回収した売掛金を原資として買取代金を返済させるもの)が発生しています。

(参考:金融庁)

売掛債権に財産的価値を見出し、売買取引の対象にするファクタリングは元々海外が発祥で、特にアメリカでは日常的に行われている取引です。日本国内では、一昔前までは認知度はあまり高くなく、少なくとも一般的とは言えない状況でした。

しかし、企業がビジネスにおいて資金を必要とするのは海外も日本も同じです。資金繰りの問題が全くない企業はめったにありませんし、特に中小の事業者は流動性の高い資金が急に必要となるシーンが多く、従来の借り入れによる方法では目の前の資金需要に対応できないことも少なくありません。

そこで、市場が徐々に迅速性に優れたファクタリングという資金調達法に着目し始めます。実際、日本の経済産業省も従来の融資では不動産による担保に過度に依存しており問題があるとして、売掛債権を利用した資金調達を促進する必要があるという認識を示しています。

売掛債権は活用しやすい流動資産としての機能を持ちますから、資金調達に活用できれば国内事業の活性化につながるということです。少し調べれば、違法性のあるものではないことが分かると思いますので、ぜひ時間をとってご自身でも調べてみることをお勧めします。

ファクタリングの仕組みと利用ポイント

ファクタリングは売掛債権をファクタリング業者に売却して資金を得るものですが、実際のロジックは少し複雑です。金券や貴金属を買取業者に売るようなイメージとは異なるので、ここで実際の取引の仕組みを確認していきます。

ファクタリングでは以下3種類の登場人物が関わります。

  1. 売掛債権譲渡企業・・売掛債権を保有し、これを譲渡して現金化したい会社
  2. 売掛先企業・・支払期日に売掛金を支払う義務を負う会社
  3. ファクタリング業者・・売掛金を買い取り、手数料利益を得る会社

上記1の会社が売掛債権を3の業者に譲渡するわけですが、ビジネス上の債権を売るということで問題になるのが信用面です。一般的に、日本国内では売掛債権を譲渡する=資金繰りに窮していると捉えられるため、1の会社はできれば売掛債権を譲渡することについて、他社に知られたくないという気持ちが働きます。

直接の取引先である7の会社に知られてしまうと、もしかしたら今後の付き合いを敬遠されてしまうかもしれません。また噂が業界内に知られてしまうと、他方面で取引を敬遠される可能性が出てくるので、その影響が大きくなることも考えられます。

一方で、債権譲渡について取引先に知られても問題ないというケースもあります。そのため、ファクタリングでは2社間取引と3社間取引という二つの取引形態が用意されており、ケースによって使い分けができるようになっています。

二つの取引形態を以下で見てみましょう。

2社間取引債権譲渡企業が取引先に知られないように進めることができるのが、2社間取引による方法です。売掛債権を譲渡する企業とファクタリング業者の2社だけが取引当事者になって進める形態で、売掛先企業は契約関係に入ってきません。

そのため売掛債権を譲渡することについて知られずに進めることができます。取引の流れを確認してみましょう。

  1. 売掛債権譲渡企業がファクタリング業者と契約し、債権譲渡を行う
  2. ファクタリング業者が手数料を間引いたうえで買取り金を交付する
  3. 売掛先が、約定期日に債権譲渡企業に対して支払いを行う
  4. 上記の金銭をファクタリング業者に支払い手数料の精算を行う

2社間取引におけるポイントは上記3番です。売掛先の企業はファクタリングのことを何も知らされていないので、売掛金は期日になれば通常通りに支払われます。支払われた売掛金は、ファクタリング契約に従い、上記4のフェーズでファクタリング業者に手数料精算として渡ることになります。

3と4のフェーズで、売掛金は一旦債権譲渡企業を経由することになるので、ファクタリング業者側にはリスクになります。たまに見られるのが売掛金の使い込みです。手数料精算として使うべきお金を、他に使い込んでしまうことは稀にあります。

故意によるケースもありますが、口座振り込みの場合は自動引き落としなどで使われてしまい、ファクタリング業者への清算金が足りなくなってしまうことがあるのです。2社間ファクタリングによる場合、ファクタリング業者への手数料精算金は確実に手元に用意しておく必要があります。

3社間取引ケースによっては、債権譲渡企業が売掛先にファクタリングを知られても特に困らないということもあります。その場合、売掛先の合意を取ったうえで取引当事者になってもらうこともできます。債権譲渡企業、ファクタリング業者、及び売掛先企業の3社によってファクタリングを行うのが3社間取引です。

取引の流れは以下のようになります。

  1. 債権譲渡企業とファクタリング業者で3社間取引の合意をする
  2. 売掛先企業の合意を取り付け、3社間で契約を締結する
  3. ファクタリング業者が売掛債権を買い取り、手数料を間引いたうえで買取り金を交付する
  4. 売掛先企業からファクタリング業者に直接売掛金が支払われる

売掛先の合意を取ること以外では、3社間取引におけるポイントは上記4のフェーズに見られます。2社間取引では、売掛金は一旦債権譲渡企業を経由してファクタリング業者に渡りますが、3社間取引では売掛先から直接ファクタリング業者に支払われます。

これは売掛先の合意を取って当事者になってもらうことで可能になるロジックです。ファクタリング業者の側からすると、資金回収のリスクが減り、ほぼ確実に利益確保が望めます。

ファクタリング業者の多くは3社間取引を原則とするところが多く、顧客から相談があった時に必要に応じて2社間取引を検討するという姿勢が見られます。手数料負担の面では、ファクタリング業者のリスクが下がる3社間取引の方が2社間取引よりも安くなるのが通常です。

ファクタリングの契約までの流れ

では、ファクタリングを利用するとして、契約までの流れはどうなるのかを見ていきます。ファクタリングは希望すれば必ず利用できるとは限らず、一定の審査をクリアする必要があります。

めぼしいファクタリング業者を見つけたら、まずはコンタクトを取り、必要とする資金額について相談します。また先ほど2社間ファクタリング、3社間ファクタリングで説明したようにそれぞれ契約の流れに違いがあります。

手数料などの条件は、ある程度の概算をあらかじめ教えてもらうことができますが、詳細を確定させるには必要書類を提出して正式な審査を経る必要があります。ファクタリング業者や個別のケースにもよりますが、概ね以下のような提出書類を求められます。

  • 貸借対照表や損益計算書、確定申告書など
  • 売掛先と交わした契約書や個別契約にかかる請求書、納品書など
  • 過去の入金履歴が確認できる通帳

一応、売掛債権譲渡企業自体の信用もチェックしますが、ファクタリングの審査は融資や借り入れの審査とは違い、債権譲渡企業の信用はあまり重視しません。その代わりに、資金回収を確実にできるようにするため、売掛先企業の信用調査を重点的に行いま

ファクタリング業者にもよりますが、売掛先の調査は帝国データバンクなどの指標を参考にすることが多いようです。売掛先の企業そのものに問題がなければ、売掛債権の中身を精査して、買取可能額を算出します。

またケースによっては、債権譲渡登記を求められることもあります。債権譲渡登記とは、どんな債権が誰に譲渡されたのか、登記によって証明することができるものです。

債権の二重譲渡ができないようにし、ファクタリング業者のリスク回避のために利用されます。手数料などの条件が提示された後、債権譲渡企業側が納得できれば、その条件で契約となります。

ファクタリングの仕組みを学ぶ

ファクタリングは売掛債権を譲渡して資金調達を図るものですが、必ずしも一般的な商社だけに利用が限定されるわけではありません。将来入金を受けられる債権があれば利用することができるので、例えば医療系や介護系のビジネスでも利用可能です。

病院やクリニック、調剤薬局、介護事業者などは、利用者が支払う一部負担金の他に、社保など公的な支払機関を通して診療報酬や調剤報酬、介護報酬を受け取っています。

クリニックを例にとると、患者さんが受診した際に支払う診療代は現役世代であれば三割ほどです。残りは医療機関がレセプトを作成して、公的な診療報酬支払機関に送付します。

診療報酬の支払い機関はレセプトを整理して医療機関に診療報酬を支払いますが、実際に入金がされるまでは、約2ヶ月間程のタイムラグがあります。その間に何らかの資金需要が生じた場合は、診療報酬債権を売掛債権としてファクタリング業者に譲渡することができ、現金需要を満たすことができます。

同じように、調剤薬局では調剤報酬債権、介護施設では介護報酬債権が発生し、それぞれの支払機関に対して債権を有する形になるので、これをファクタリングの対象にすることができます。

昨今のコロナ禍で病院経営が苦しいところも出ているようですが、こうした場面で固定費の支払いなどに充てるためファクタリングを用いることも有効です。診療報酬や調剤報酬などの売掛先は公的な機関ですので、支払いがなされないリスクは極めて低いと考えることができます。

そのためファクタリング業者にとっては回収しやすい相手となるので、上記のような債権は喜んで買い取ってもらうことができます。ファクタリング業者によっては、一般的な商社の売掛債権より手数料を下げて対応してくれるところもあります。

ファクタリングは個人契約できない?

ファクタリングはビジネスを行う事業者が利用するものであり、サラリーマンなどの一般個人が利用することはできず、基本的には法人がメインの利用者になります。サラリーマンは売掛債権を保有することは通常ありませんので、これを考えれば納得がいくと思います。

ただし、個人事業者については別です。個人でも事業者であることには変わりなく、ビジネス上で売掛債権も普通に発生します。個人事業者がファクタリングを利用できるかどうかについては、個別のファクタリング業者によって対応が異なります。

「個人事業者は利用不可」と言い切るところもありますし、「個人事業主も利用可」あるいは「個人事業主歓迎」とするところもあます。個人事業主が利用できる場合でも、多くのファクタリング業者は売掛先が個人となる債権は買取り対象としない所が多いようです。

個人事業者は小回りが利くビジネスを行うことも多く、取引相手が法人のこともあれば個人のこともあります。法人が相手となる売掛債権は買取り対象になっても、対象が個人名義となる売掛債権は買取り対象にしないことが比較的多いです。

他方、ビジネス向けのファクタリングとは別に、「給料ファクタリング」というサービスも存在します。こちらはビジネス向けファクタリングを個人向けに応用したもので、「給料を受け取る権利」を売掛債権と考えて取引対象にするものです。

給料ファクタリングは個人でも利用できますが、こちらはこれまで説明してきたビジネス向けのファクタリングとは性質が全く異なるものなので、ファクタリング事業者がこちらの条件を満たしているかしっかりと確認する必要があります。

  • 貸金業の登録をしているのか?
  • 利息制限法に準じた手数料なのか?

給料ファクタリングは法的にもグレーなところもあるので、利用する前にファクタリング業者を調べましょう。基本的に「貸金業の登録」「利息制限法手数料」こちらを満たしていないファクタリング業者は「闇金」の可能性が高いので、利用しないことをお勧めします。

 

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