第1「意外とわかっていない」競馬の基本のキホン
競馬は初めて、という方のために、競馬を始めるにあたってこれだけは押さえておきたいという項目をいくつか説明しておきます。特に、第3以降から馬券攻略で触れる内容を中心に説明していますので、お見逃しなく。
「すでに知っているよ」「そんなのわかっているよ」という方は、飛ばし読みでも構いませんが、(確認の意味でも)最低一度はチェックしておくことをオススメします。
■馬券の種類について
初めに、馬券の種類と特徴について簡単に説明します。
2020年10月現在、JRAで購入できる馬券には、全部で9種類あります(※)。
※9番目の馬券として2011年に登場した「WIN5」という馬券は、JRAが指定した5つのレースすべての1着馬を当てる馬券です。この「WIN5」は、予想の組み立て方や攻略方法が、他の8つの馬券と異なる部分が多く、的中の難易度も高くなるため、初心者向けではないと判断し、ここでは攻略の対象外としています。
とは言え、WIN5は、払戻金が最高で6億円と夢のある馬券ですので、興味がある方は、ぜひチャレンジしてみてください。
WIN5を除いた馬券は、次の8つです。
①単勝
②複勝
③枠連
④馬連
⑤馬単
⑥ワイド
⑦3連複
⑧3連単
それぞれの馬券についてカンタンに特徴を説明します。
①「単勝」…どの馬が1着になるかを当てるもっともシンプルな馬券です。初心者にもわかりやすく、もっとも買いやすい馬券といえます。馬券(勝馬投票券)は、馬番で購入します。
②「複勝」…3着までに入る馬を当てる馬券です(※)。単勝と同じく、複勝も馬番で購入します。3着までに入れば的中なので、当然、単勝よりも的中の確率は上がりますが、その分配当は低くなります。
※注意出走頭数が8頭以上の場合は3着までに入れば的中、7頭以下のレースでは、2着までに入れば的中となります。なお、出走頭数が4頭以下のレースの場合、複勝馬券は発売されません。
③「枠連」…1着と2着になる馬の枠(番号)の組み合わせを当てる馬券です。
枠連の場合、1着と2着の着順は関係ありませんので、たとえば「5-8」という枠連を買った場合、5枠の馬が1着、8枠の馬が2着、または、8枠の馬が1着、5枠の馬が2着でも的中となります。(枠連のみ「枠」の番号で購入します)
④「馬連」…1着と2着になる馬(番号)の組み合せを当てる馬券です。枠連と同じく、1着と2着の着順は関係ありません。ちなみに、正式名称は「普通馬番号二連勝複式勝馬投票法」です。
⑤「馬単」…1着と2着になる馬(番号)を着順通りに当てる馬券です。先ほどの馬連は、1着と2着の着順は関係ありませんでしたが、この馬単は、「着順通り」に当てなければならないので、的中させるのは馬連よりも難しくなるといえます。
⑥「ワイド」…3着までに入る2頭の馬(番号)の組み合わせを当てる馬券です(※)。1着から3着までの着順は関係ありません。
※注意ただし、3着同着となった場合は、3者同士の組み合わせは不的中となります。
⑦「3連複」…1着、2着、3着となる馬(番号)の組み合わせを当てる馬券です。1着から3着までの着順は関係ありません。~までの馬券に比べて、当てるのは難しくなりますが、その分オッズ(配当)も高くなります。
⑧「3連単」…1着、2着、3着となる馬(番号)を着順通りに当てる馬券です。1着から3着までを「順番通り」に当てなくてはいけないため、8つの馬券の中でもっとも難易度が高いといえます。その分高配当も期待できます。
参考までに…
2020年10月1日現在、中央競馬(JRA)における3連単の最高配当金額は、2012年8月4日の新潟競馬場、第5レース(サラ系2歳新馬)で出た、2983万2950円です。これは、4080通り中3892番目の人気の組み合わせでした。100円が3千万近くになったわけですから、まさに一攫千金といえます。
余談として…
ちなみに、この歴史的な大波乱レースで1着となった「ミナレット」という馬は、それから約3年後の2015年ヴィクトリアマイル(G1)においても、最低人気の18番人気でありながら3着に入り、G1レースける3連単の最高配当金額、2070万5810円(2020年1日現在)をたたき出した1頭としても名を残しています。
新馬戦で勝利して3連単の最高配当を記録し、その後、生涯1度だけ出走したG1レースでも3着に入ってG1レースの3連単の最高配当も記録するというのは、単なる偶然なのか、それとも運命なのか…、競馬の面白さの一つともいえる出来事でした。
■オッズについて
馬券(正式名称:勝馬投票券)が的中した場合の、払戻率(概算)のこと
を指します。100円に対する倍率で掲示されています。レース前に表示されているオッズはあくまでも概算となりますので、レースが終わった後の確定オッズとは、若干数値が変動することもあります。
オッズが100倍を超えると、いわゆる「万馬券」(100円買うと、1万円以上の払戻しとなる)と呼ばれます。
■レースの区分について
中央競馬では、「平地競走」と「障害競走」の2種類の競走区分があります。
平地競争はさらに、「芝レース」と「ダートレース」に分かれます。各レースにはそれぞれ特徴があるので、その見極めが馬券攻略のポイントの一つともいえます。
■レースの種類(クラス分け)について
JRAでは、基本的に馬の強さによってクラス分けがなされています。レースの種類としては、「新馬戦」「未勝利戦」「1勝クラス」「2勝クラス」「3勝クラス」「オープン」「重賞(G1~G3)」などがあります。(条件によって、出走できるレースは異なります)
〇「新馬戦」について
「新馬戦」は、一度もレースを走ったことがない馬のみが出走できるレースのことです。「メイクデビュー」と表現されることもありますが、これも新馬戦のことを意味します。
2歳の6月から競走馬はデビューしていきますが、後に名馬と呼ばれるような成績を残す馬であっても、一番初めに出走するレースは、この新馬戦となります。ですので、この新馬戦では、その後、何連勝するような強い馬と、1勝すらできないような弱い馬が一緒に走ることになります。
なお、3歳の3月以降になると新馬戦がなくなってしまうため(※)、故障やケガなど何らかの理由で3月までにレースに出走できなかった馬は、未勝利戦に出走することになります。
※2021年からは3歳新馬戦が廃止される予定です。(2019年7月JRA発表)新馬戦は2歳馬に限定して実施されることになり、3歳で初出走となる馬は、既に一度以上走ったことのある馬相手の(3歳)未勝利戦でデビューすることになります。
現行の新馬戦は、2歳新馬としてダービー(G1レース)の翌週にあたる、3回東京と3回阪神での競馬初日から開始されており、1日12レースあるうちの5、6レースで行われることが多く、各競馬場で1日1、2レース行われています。
〇「条件戦レース」について
「1勝クラス」「2勝クラス」「3勝クラス」というのは、いわゆる条件戦レースのことです。
2019年の夏から、名称やルールが変更になってこのような呼び方になりました。
これまでは馬が収得した賞金の額(500万とか1000万とか)をそのまま条件戦の呼び名にしていましたが、改定により、原則その馬の勝利数によるクラス分けが実施されることになりました。
各クラスの条件は次の通りです。
1勝クラス…収得賞金額500万以下
2勝クラス…収得賞金額501万~1000万
3勝クラス…収得賞金額1001万~1600万
オープン…収得賞金額1600万超
実際の運用自体は、これまでとほとんど変わっていません。ちなみに、上位クラスにいた馬が下位のクラスに降格する(移る)、いわゆる「降級制度」は廃止となり、レースに勝てば必ず上のクラスに昇格することになります。
〇「重賞レース」について
オープンレースの中でも、賞金額が高く、多くの競馬関係者が目標とするのがこの重賞レースです。
日本では、グレード(Grade、頭文字を取って「G」と表記)という呼び方で使われていますが、欧州では、グループと呼ばれています。
中央競馬における重賞レースは、3段階に格付けがされており、G3、G2、G1とあります。この中でもっとも格式が高いのが「G1レース」と呼ばれるものです。
代表的なG1レースといえば、「ダービー」「天皇賞(春と秋があります」「ジャパンカップ」「有馬記念」などでしょうか。普段は競馬をやらない人でも、ニュースやスポーツ新聞などで一度ぐらいは目にしたことがあるかと思います。
各G1レースは、毎年一回決まった時期に実施されていますが、歴史が古いものも多く、日本で最も古いG1レース「ダービー」(正式名称:東京優駿競争、1932年から施行)は、2020年で第87回を数えている歴史あるレースです。このダービーを勝った騎手がダービージョッキーと呼ばれます。
元英国首相のウィンストン・チャーチルによる「ダービー馬のオーナーになることは一国の宰相になることより難しい」という競馬ファンなら一度は聞いたことがある有名な言葉は、ダービーに勝つことの難しさとその名誉を物語っているといえます。
〇「限定戦・ハンデ戦」について
レースの種類には、「限定戦」や「ハンデ戦」といったレースもあります。「限定戦」とは、馬齢や性別で分けられるレースのことを指しており、「2歳限定戦」「3歳限定戦」「牝馬限定戦」などがあります。
「ハンデ戦」とは、競走馬の能力に応じて、出走馬の斤量(きんりょう)を変えて行うレースを指します。斤量とは、競走馬に乗せる「おもり」のことです。(負担重量とも言います)
ハンデ戦以外のレースでは、基本的にすべての馬の斤量は同じで実施されます(牡馬と牝馬の違いはあります)。
しかし、ハンデ戦レースにおいては、JRAのハンデキャッパーが、馬の能力に応じて斤量を個々に定め、バラバラの斤量で実施します。
能力の高い馬には重い斤量を課し、能力の低い馬には軽い斤量を課すことで、能力の低い馬であっても好走確率を上げるためにハンデを決めます。
このような設定をすることで、どの馬も1着になる可能性が生じる、それがハンデ戦です。各馬の能力差が斤量によってなくなり、馬の取捨選択が難しくなるため、予想が難しく、波乱も起こりやすい(高配当になりやすい)レースともいえます。
■馬の性別について
競走馬の性別としては、牡馬(ぼば)と牝馬(ひんば)、その他に、牡馬が去勢された馬「騙馬」(せんば)があります。それぞれ特徴があるのですが、もっとも大きな違いは、先ほどのハンデ戦のところで触れた「片量」の部分です。
牡馬と牝馬では、レースで背負う斤量に差が付けられており、牝馬は、牡馬よりも斤量が2kg軽くなります。斤量の恩恵を受けてはおりますが、牝馬の中には、牡馬と互角以上に走る馬もいるので、一概に牝馬が(牡馬よりも)弱いというわけではありません。
■馬場の状態について
馬場は、競走馬の走り、すなわちレースの「結果」に影響を及ぼす重要な要素となりますので、ここで触れておきます。
競馬場の馬場の種類には、「良」(りょう)、「稍重」(ややおも)、「重」(おも)、「不良」(ふりょう)の4種類があります。競馬場の天候、特に降水量(雨量)の影響を受けることがほとんどで、あまりにもひどい不良馬場は、レース後に騎手から「泥んこ馬場だった」などと揶揄されたりすることもあります。(大抵は、負けた騎手から出てくる言葉です)
馬場状態が変わったときには、各レース情報とともに、JRAより必ず発表があります。
馬場の状態は天候によって目まぐるしく変わり、たとえば、前日に降った雨の影響を受けて、その日最初の第1レースでは「重」馬場だったのが、レース当日の朝からの晴天により(馬場も回復してきて)、昼ごろには「稍重」馬場になり、午後のメインレース(通常第11レース)や最終レース(通常第12レース)が始まるときには「良」馬場に変わっている、ということも頻繁に起こります。
また、芝コースとダートコースでは、天候(雨)の影響の受け方も異なり、一般的に、芝コースでは、雨が降ると馬場が荒れるので、タイムが遅くなり、ダートコースでは、雨が降ると(砂が固まり、脚抜きが良くなるため)タイムが早くなる傾向があります。
■馬の脚質について
競馬の基本情報として、最後に「馬の脚質」について触れておきたいと思います。
馬の脚質には、4つの種類があります。「逃げ」「先行」「差し」「追込(追い込み)」の4つです。
「逃げ」というのは、スタート直後からどの馬よりも前に出て、常に先頭をキープし、そのままゴールまで逃げ切ってしまうような馬のことを指します。
逃げ馬として有名な馬といえば、「ツインターボ」や「ミホノブルボン」「メジロパーマー」といったところでしょうか。「サイレンススズカ」という悲運の最期を遂げた速さと強さと人気を兼ね備えた逃げ馬も有名でした。最近の逃げ馬の多くは、人気を背負って走るというよりも、ノーマークで伏兵として逃げることが多い感があります。時代とともに逃げづらくなったということもあるかもしれません。
また、ときには騎手(またはオーナーの意向など)によって、普段の走法は「逃げ」ではないのに、奇襲的に逃げて、そのままゴールまで押し切り、波乱を起こすようなケースもあります。
逃げ馬は先頭に立つため、レースで目標にされやすく、ペース配分も難しいため、惨敗するか逃げ切って1着となるかの差が大きく、4つの脚質のなかでも、もっとも予想するのが難しい脚質だといえます。
とはいえ、逃げ馬は、スタート直後から先頭に立って逃げるので、競馬初心者にも(見ていて)分かりやすく、「このまま逃げ切って当たるかも…」という楽しい気持ちにさせてくれる存在でもあります。
「先行」というのは、逃げ馬がいた場合はそのすぐ後ろの2番手か、3、4番手あたりのいわゆる「好位」と言われる位置につけてレースを運び、最終コーナーを回って直線に向いたあたりで先頭に出てゴールを目指すような馬の脚質を指します。
「先行」馬は、レース展開の影響を受けにくく、終始リスクが少ないポジションでレースを運ぶことができるため、能力が高い馬ほどこの戦法を選ぶ傾向があります。逆にいうと、能力が高い馬でなければ、なかなか「先行」のポジションを保つことが難しいともいえます。
「差し」というのは、先行馬の後ろあたり、一般的には、道中8番手から10番手あたりに位置してレースを進め、最後の直線に向いたところでラストスパートをかけてゴールするような馬の脚質を指します。
逃げ馬や先行馬などの動きを見ながらレースを進めることができ、自ら仕掛けどころを判断して動き出すことができるメリットがある反面、他馬を確実に差し切るだけのスピードや瞬発力を持っていないと中団で埋もれてしまって終わり、となるケースも少なくありません。
最後に、「追込」(追い込み)です。「追込」は、後方もしくは最後方に位置しながらレースを進み、最後の直線に向いたところで、一気に他の馬を抜き去る戦法です。
見事にハマれば、ほぼすべての馬を抜き去ってゴールすることになるので、見ていても爽快で豪快な戦法ではありますが、仕掛けどころを間違えたり、他の馬を一気に抜き去るだけの走力と持続力がないと、後方に位置したままでレースを終えることになり、惨敗もありえます。追込は、諸刃の剣ともいえる脚質です。
競走馬における脚質の比率としては、「先行」「差し」の馬が多く、「逃げ」「追込」の馬は少ない傾向があります。なお、この4つの脚質の他に「自在」というタイプの馬もいます。「自在」というのは、特に脚質が定まっておらず、個々のレースに応じて、脚質を自由に使い分けられるような器用なタイプの馬に見受けられます。
どの脚質にせよ、それぞれのレース展開や他の馬の脚質、他の騎手との駆け引きなどによって脚質ごとの有利・不利は変わりますので、一概にこの脚質が強いというものはありません。あくまでもそのレース次第、相手の馬次第で予想は組み立てていくことになります。
以上で、終わりです。次は、「間違いだらけの競馬予想」について、ご説明します。
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