第1
・間違いだらけの穴馬選び
競馬で人気薄の馬、いわゆる穴馬を狙うときに、あなたはどういった基準でピックアップしているでしょうか。競馬番組の内容、競馬新聞の予想の印、前レースの結果、血統、調教の動き、関係者のコメント、それとも、Youtubeに挙がっている競馬予想?
競馬予想をする上では、膨大な情報が存在しています。
良く言えば、自分の意思で自由に情報を取捨選択できる。悪く言えば、とにかく情報に振り回される。
こんな状況です。
情報を正しく選別できて、有益な情報のみを選ぶことができれば、誰でも競馬予想はカンタンです。しかし、ほとんどの方があまりにも膨大にある情報に振り回されてしまって、結果に結びつけることができていないのが現状です。
穴馬選びも同様です。自分では穴馬を選ぶために正しい情報を元に判断していると思っているものが、ただの思い込みに過ぎないことも多々あります。単なる思い込みに過ぎない情報(要素)として、次のようなものがあります。
代表的なものとしてここでは3つ挙げておきます。
■間違いだらけの穴馬選び
その1:調教を見る
調教というのは、レースの前に競走馬が調子を整えたり、レースに向けて調子を上げていくために行う試走(練習)のようなものです。JRA(日本中央競馬会)において、調教施設とは大きく分けて2か所あります。
東日本を拠点とする厩舎が集まる美浦トレーニングセンター。西日本を拠点とする厩舎が集まる栗東トレーニングセンター。
競馬予想をする人たちは、調教における馬の動き(映像)や実際の調教タイムをみながら、この馬は調子が良いとか悪いとかを見極めるわけです。
その馬自身の最高タイムが出たから絶好調とか、前回に比べて動きが抜群だから今度は間違いないとか、調教の様子を通じて様々な意見や評価が飛び交うことになるわけです。
しかしながら、調教タイムが抜群に良かった馬が、レースではアッサリ負けた。調教の内容が前走とは見違えるように変わっていたけど、レースではアッサリ負けた。馬体が素人がみても最高の出来で、動きも躍動感が溢れていた。でも、レースではアッサリ負けた。
このようなパターンは、無数に存在します。調教はあくまでも調教。(レースはレース)調教が良い=レースでも走るではないということを理解しておいていただきたいと思います。
調教が良い(と見える)馬は、結果的に皆の注目を集め、人気も集まり、馬券的な妙味も低くなります。調教の内容(馬の動きや調教タイム)を参考にして予想するのは、作業としては楽しいかもしれませんが、穴馬を狙って高配当を得ることを目指すうえでは、そこにかける時間の割にあまり効果的ではないので、調教を見るのは止めておきましょう。調教を一切見なくても、競馬予想にはまったく問題ありません。
それでも、どうしても調教の内容を競馬予想に取り入れたいのであれば、馬同士の調教内容を比較するのではなく、1頭の馬の前回と今回の調教内容を比較するようにしましょう。(いわゆる縦の比較です)
縦の比較であれば、少しはマシかもしれません。
■間違いだらけの穴馬選び
その2:競馬新聞のコメントを見る
「今回の条件はこの馬にベストだから、大いに期待できる。」「前走はスタートで不利があったのがすべて。今回は巻き返せる。」「ここを目指して入念に調整してきた。人気はないが一発を狙える。」「流れにさえ上手く乗れれば、頭まで狙える。」
競馬新聞をみると、このようなコメントが本当にたくさん載っています。中には、思わず乗っかりたくなるような内容や表現もあるかもしれません。しかも、自分が気にかけていた馬であればあるほど、コメントの内容も余計にプラスに思えてきます。
でも、それだけです。そんな「気がする」だけです。
コメントはあくまでも、誰かの推測や主観的な意見・思いにしか過ぎません。
根拠があるように書いてあっても、じつはまったく根拠がなかったり、(発言者の)単なる思い込みだったりします。もちろん、コメントの中には事実に基づいている内容もあると思いますが、それをコメント内容だけから判別するのは、至難の業です。
関係者のコメントだけでなく、競馬予想サイトなどの掲示板などのコメントも同様です。真実が含まれているコメントもあるかもしれませんが、そのほとんどは投稿者の主観や気持ちによるものです。そういったコメントを、競馬予想をする際の要素に含めてしまうと、偏った情報の中での判断となり、収拾がつかなくなりますのでご注意ください。
楽しむだけのコメント読みなら問題ないですが、穴馬探しをするためのコメント読みは、百害あって一利なしですので。初めから読まないようにしておくことをオススメします。
■間違いだらけの穴馬選び
その3:パドックを見る
やっぱり、実際に走る馬を見るのが一番。レース直前の馬を見ているのだから、当然競馬予想としては有効だ。
パドックにそんな印象(期待)を持って、レースごとにパドックに通っている人がいます。残念ながら、それは単なる自己満足。マスターベーションに過ぎません。
一流ジョッキーの中にも、「パドックを見てもわからない」「パドックを見ても意味がない」と発言しているジョッキーがいるほど、パドックとレース結果に関係性はありません。
どんなに調子が良さそうに見えるからといって、その馬の好走が約束されるわけではありません。あくまでも、「そう見えるだけ」であって単なる自己満足に過ぎません。
パドックを見て、どんなに人気薄の馬が良く見えたとしても、「この馬が来る」などとは思わないように。
仕事として常時、馬と接しているジョッキーが「見てもわからない」と言っているのですから、素人が見てもわかるわけがないのです。わかった気になることはあるかもしれませんが、それは単なる思い込みですので、パドックは軽視しましょう。
例外として、パドックが一つだけ有効な点としては、「勝負を避ける(やめる)」判断をするときです。
(パドック以外の)他の理由で狙おうとしていた穴馬が、パドックで見たら明らかに動きが悪かった(鈍かった)、または、歩様がおかしかった、などといったときに、馬券を買うのを避ける(やめる)という使い方は、パドックの活用方法として有効だと思います。
リスクを回避するためにパドックを見るのはOK。
穴馬を買う根拠として、パドックを見るのはNG。
パドックにおいては、この使い分けをしていただければと思います。
第2
・穴馬を選ぶときの考え方
ここからは実際に、穴馬の探し方、穴馬を探すときの考え方について説明したいと思います。
まずは、考え方です。穴馬をピックアップするときには、過去のレース傾向や人気の分布を参考にしながら、「点」ではなく、「面」で考えていきます。
つまり、競馬予想をするうえで、いきなり個々の馬を見て判断するのでなく、まずは一定の基準に沿って「グループ」で見ていくのです。そうすることで、自分だけの思い込みや主観的な情報に基づく判断を回避できます。
具体的に説明します。
・人気の分布をグループ化する
まずは、こちらをご覧ください。これは、ジャパンカップ(GI)における2010年から2019年までの過去10年の1着馬~3着馬までの人気です。(上から1着、2着、3着、以下同様)
2010年_4番人気・1番人気.8番人気
2011年_2番人気・6番人気・14番人気
2012年_3番人気・1番人気.2番人気
2013年_1番人気・7番人気・11番人気
2014年_4番人気・3番人気・6番人気
2015年_4番人気・7番人気・1番人気
2016年_1番人気・5番人気・6番人気
2017年_5番人気・2番人気・1番人気
2018年_1番人気・4番人気・2番人気
2019年_3番人気・5番人気・2番人気
このような一覧表示では、どの辺りの人気の馬が好走しているのかがちょっとわかりづらい印象があります。見る人によっては解釈や判断も違ってくると思われます。
そこで、各人気をグループで区分して、改めて人気の分布をみたいと思います。グループ分けは、次の5段階です。
Aグループ【1番人気】
Bグループ【2~4番人気】
Cグループ【5~7番人気】
Dグループ【8~10番人気】
Eグループ【11番人気以下】
といった感じです。
これに沿って先ほどの結果を整理してみると、(上から【A・B・C・D・E】の順です)
2010年【1・1・0・1・0】
2011年【0・1・1・0・1】
2012年【1・2・0・0・0】
2013年【1・0・1・0・1】
2014年【0・2・1・0・0】
2015年【1・1・1・0・0】
2016年【1・0・2・0・0】
2017年【1・1・1・0・0】
2018年【1・2・0・0・0】
2019年【0・2・1・0・0】
こうしてグループに分けて表示することによって、傾向がより鮮明になります。
過去10年の分布に沿うと、2020年の傾向としては、【1.1.1.0.0】もしくは、【1.2.0.0.0】の可能性が高いということが導き出せます。上位人気で決着する可能性が高く、人気薄の馬を狙うとしても5~7番人気までを1頭程度馬券に含めるに留めるのが無難。
2020年のジャパンカップの結果はご存知の通り、上位人気の3頭が1~3着となり、分布としては【1.2.0.0.0】という形になりました。
2020年のジャパンカップは、上位3頭が3強と評されるほどの抜けた人気になってしまっていたので、そもそも馬券勝負するレースではなく「観るレース」の要素が強かったのですが、馬(の人気)を個々でみるのではなく、グループ分けして考えるという流れとしては、このような感じになります。
ちなみに、2020年の結果をふまえると、次のようになります。(上から【A・B・C・D・E】の順)
2011年【0・1・1・0・1】
2012年【1・2・0・0・0】
2013年【1・0・1・0・1】
2014年【0・2・1・0・0】
2015年【1・1・1・0・0】
2016年【1・0・2・0・0】
2017年【1・1・1・0・0】
2018年【1・2・0・0・0】
2019年【0・2・1・0・0】
2020年【1・2・0・0・0】
2021年のジャパンカップに向けての考察としては、1番人気の馬は70%の確率で馬券に絡んでおり、2021年も馬券に絡む可能性はかなり高い。2〜4番人気の馬は、80%の確率で最低1頭は馬券に絡んでいる。5〜7番人気の馬は70%の確率で1頭は馬券に絡んでいる。8〜10番人気の馬は軽視。11番人気の馬も軽視。想定としては、【1.1.1.0.0】あるいは、【1.0.2.0.0】といった分布予想が見込めます。
穴馬の候補としては、Cグループ(5番人気〜7番人気)の3頭が有力となります。
馬券的に言うならば、1番人気を軸にして5~7番人気を相手に(馬連の場合)、または、1番人気の馬と、2~4番人気の馬から1頭の2頭軸で、相手に5~7番人気の馬(3連系)、といった狙い方のパターン。
もしくは、5~7番人気の馬の中の1頭を軸にして(選び方のポイントは次の章で説明します)1~4番人気の馬に流す(馬連の場合)パターンなどが妙味があると判断できます。
はじめから馬を単体で見てしまうと、どうしても自分の思いやこだわり、過去のレースの記憶などが予想に盛り込まれてしまいます。そういった主観的な情報や感覚を排除するために、まずは、グループ単位でおおよその見込みを付けることが重要です。
なお補足として、このグループ分けは、11頭以上のレースを前提としています。11頭に満たないレースについては、各自の判断で賭けるか賭けないかを定めていただければと思います。私自身は11頭に満たないレースについては、馬券購入の対象外にするという自分独自のマイルールを設定しているので、原則、馬券は購入しません。
ここまでをまとめます。穴馬を選び出す流れは次の通りです。
- まずは、馬の人気に応じて(A~Eまでの5つに)グループ分けをする。
- 次に、過去のレース結果に基づいて、どのグループが馬券に絡む可能性が高いのか、見込みをつける。
ここで重要なポイントとして、過去のレース結果というものがあります。過去のレース結果や傾向がデータとして(できれば過去10年分ぐらい)あることが必要となります。
そうなると必然的に、狙うのは重賞レースが望ましいと言えるでしょう。もちろん、重賞レース以外のレースでも、過去の結果や傾向のデータが確認できるならば、馬券購入の対象としても構いません。
しかしながら、できるだけ時間をかけずに競馬予想をするのであれば、過去のデータが豊富にある重賞レースを対象に選ぶのがもっとも効率的だといえます。
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